読書の小径 その55 「忘れても、しあわせ」 2002/4/7(日)17:05
映画館から出てくる観客の手元にハンカチが散見する。
上映されている映画の題名は「折り梅」(原田美枝子、吉行和子、トミーズ雅等が出演)で、観客の層は、 老若
男女といった具合です。こうした映画にしては、観客は結構入っているように思えました。
私は、3月24日にシルバー劇場へ観に行って来ました。
映画館のロビーには、小菅マサ子さん(年齢80歳、老人性痴呆)が描いた絵が数点展示されていました。
原作は「忘れても、しあわせ」(小菅もと子著 日本評論社刊)という本で、老人性痴呆に関わる介護の大変さ
(苦闘と表現したほうが適切かも?)と、それが原因でいったんは崩壊しかかる家族が、それゆえに立ち直り、
痴呆を抱える本人の苦しみ、悲しさ、いらだち、尊厳までをもまともに受け止め、あるがままに受け入れるまで に
成長していく過程がよく描写されていました。
はじめ、頭では「痴呆症」という病気なんだと分かっていても、どう対処してよいのか分からず、痴呆を抱える
本人の苦しみ、悲しみを思いやる余裕が無く、介護と仕事と家事とに悪戦苦闘して、介護する方が参ってし まう
ことがよくあるようです。
同じ「痴呆性老人」を介護する仲間と出逢って話をする中で、「苦労しているのは」、自分だけではないんだと
分かったり、家族の者の各々の出来る範囲での協力や、介護保険によるサービス等による地域やボランティア
のサポートによって、やっと介護を家庭だけで抱えるのでなく、みんなの手助けでもって介護される人の尊厳
まで思いやれるようになっていく姿に感動と共感を覚えました。こうしてトータルな意味で人間として成長して 行く
んだなとつくづく思いました。
介護する人も、介護される人も、「忘れても、しあわせ」と言えるまでには、それはそれは、筆舌に尽くし がた
い努力や、失敗、いろんな感情の葛藤があったことでしょう。 映画では、女優の吉行和子が痴呆のある老婆を
非常にリアルに演じていたと思います。 原田美枝子もトミーズ雅の母親を介護する嫁役として、けなげなまでに
尽くしていました。 (昨年のNHKの大河ドラマ「時宗」の時の、「桔梗」を演じた時との対照が面白いとも思いま
した。 それに、世間では、こんなに良い嫁さんばかりではないのが現実なのでしょうね。 しかし、こうした嫁さんが
いてくれることは、やっぱり、救いだと思います。)
機会があったら、映画「折り梅」、そして、「忘れても、しあわせ」を読んでみてください。
素敵な涙を流すことができると思います。