読書の小径 その50  「光をみつめて」

 数年前、テレビで必死になって「生きる」ことを訴えていた少女がいた。重度の障害を持ち、

身体を自分でささえることが出来なくて、身を横たえて、くねらせながら考えを述べていた。

 観る者に共感と勇気を与えた素晴らしいドキュメンタリーであった。

 知多青年会議所に在籍した折りに、「ラブ・ウオーク イン 知多」という事業を行った

ことがある。知多市を出発し、内海駅まで名鉄電車で行き、そこから徒歩で夏の一夜を徹して

名鉄河和駅まで行き、バスで知多市に帰るという催しであった。

 約20Kmの海岸沿いの行程を夜中の0時より歩きはじめ、ご来光を見てゴールするという

企画に約40人余の中学生が参加した。

 はたして完歩できるのであろうか?リタイア組続出したら?いろんな心配事があった。

 そこで、オリエンテーションの時に、テレビのビデオを観て、感じたことを話し合い、

団旗を皆で作り、決意表明をしてもらった。

 結果、いい動機付けが出来たと記憶している。

 昭和40年4月に大府市共和町に「愛光園」という施設でない施設が出来た。どの施設からも、

どの学校からも、そして医療からもはみ出して切り捨てられた子どもたちのために、一人の女性が

取り組んだ活動が、社会福祉法人愛光園、重度身体障害者施設「ひかりのさと・のぞみの家」、

知的障害者施設「まどか」、小規模作業所「ひかりのさとファーム」、老人保険施設「相生」、

へと発展し、現在に至っている。

 そこでは、多くの人々の「ひかり」と「愛」が素晴らしいコミュニティーを作り出していると

思われる。その中心でひときわ輝いてひかりを放っている方こそ、皿井寿子(かずこ)先生です。

 「愛光園の20年」とサブタイトルのつく「光をみつめて」(皿井寿子著 風媒社刊)には、

「ひかりのさと」設立趣意書が掲載されている。

 

 自給自足できる施設でない施設をつくりたいという夢に共鳴して下さった東浦町の日高昇さんが、

6万坪の農場を活用するようにという、ありがたい申し出でをして下さいました。

 この大きなご協力を得て、単なる収容施設をつくるということに終わるのでなく、一人一人の

人間を尊重し、助けあって共に生きていこうとする人々に集まっていただき、一つの共同生活体を

つくり、人間としていかに生くべきか、いかなる社会をつくるべきか、語りあいつつ、理想を

めざして共に歩みたいと願っています。その中に、重い障害をもつ人々にも、その障害に応じた

工夫をほどこした住居をつくっていきたいと考えています。

 お互いに思いやりと感謝の気持ちを忘れずに、理想をめざして共に育っていこうと願う人々に

集まっていただき、「ひかりのさと」を創始し運営していきたいと思います。

(「光をみつめて」P95−96)

 

 愛知県土地家屋調査士会 知多支部では、土地家屋調査士制度制定50周年記念事業として、

平成12年11月22日、皿井寿子先生に「共に育つ」を演題に講演していただくことになって

います。今からその講演が愉しみです。

 

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