KYS 推薦図書・映画の部屋 96/10/27 13:50

062 KGH10661大橋真人 読書の小径 その39 「笑ってよ、ゆっぴい」


 過日、テレビで「ゆっぴいのばんそうこ」という番組を観ました。女優石井めぐみさんの長男優斗君(5歳)の生活の記録を綴った物語でした。優斗君は、分娩時、長時間低酸素状態が続いたため、脳の細胞組織のうち大脳で生きているところはほとんどなく、小脳と脳幹部がわずかに生きていて、人間として生きていける最低限の機能が残っているという状態が生後ずっと続いています。
 話すことも、笑うこともできなかった優斗君が、あるとき笑うことが出来ました。もともと、「泣く」ことは一番原始的な表現であるということで、出来たわけですが、次の「笑う」ことが出来ませんでした。生まれたばかりの赤ちゃんは、泣くことはできても、笑えないといいます。優斗君は、まさに、その発達レベルらしく、泣くことはできるけど、まだ、笑うことができないまま4年もの時が過ぎていました。(石井めぐみ著「笑ってよ、ゆっぴい」扶桑社 P209)  そんな優斗君が、「わ、笑ってるよ・・・」
パパの目をしっかり見つめたまま、たしかに、優斗がにっこり微笑んでいる。いまだかつて見たこともないようなやさしい微笑み。まるで、何かを語りかけているような澄んだ瞳。一級品の笑顔だ。「ほんとだ、ほんとに笑ってる!パパを見て、笑ってるよ!」涙で顔をくしゃくしゃにしているパパの腕の中に、優斗のかわいい笑顔。うれしくてうれしくて、涙があとから頬を伝う。涙って、ほんとうはこんなにもあったかいものなんだ。
人生最良の日。
夢がひとつ叶った。
やっぱり、人間の可能性は限りない。
蘇った優斗が、私たちに最高のプレゼントをくれた。(同著 P232-233
石井さんご夫妻の喜びがつたわり、私もついついもらい泣きしてしまいました。

また、別の箇所で、
優斗と一緒に歩いていると、ほんとうの人のやさしさや絆が見えてくる。
優斗と一緒に出会ったり、時間を重ねたりしてきている人とは、真実につながれる。
優斗は、真実を映しだしてくれる魔法の鏡なのかもしれない・・・。(同著P200
この本は、いろんなことを学ぶことができる、とっても素晴らしい本です。
優斗君や石井ご夫妻にエールをこめる意味でも、手にとって読んでいただきたいと思いご紹介しました。

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