USHIMOMO 推薦図書の会議室 95/10/25 23:32
00052/00052 KGH10661 大橋真人 読書の小径 その9 「愛、深き淵より」
昨年4月15日、群馬県勢多郡東村に富弘美術館の見学とご本人の星野富弘さんに逢いに出かけました。人口3千800人余のこの村の富弘美術館に、年間約30万人の見学者が訪れるといいます。何もない田舎町に一人の障害者となった人を中心に「こころ」で築いた「まちづくり」を見つけました。
桜と水仙、そして、美しい渓谷。通いあう「こころ」と「こころ」がうれしかった。青年会議所の仲間と、星野さんと談笑している時に、ふと,「生きるって何だろう?」、「幸福って何だろう?」と思っていました。
星野富弘さんは、東村に生まれ、群馬大学卒業後、中学の体育教師として赴任しましたが、まもなくして指導中の事故で首から下の自由を失い、苦闘の末、絵筆を口にくわえ花の絵を描き、ペンで詩を添えて書けるようになりました。その間の心の揺れ動きについては、星野富弘著「愛、深き淵より」(立風書房)に克明に記述されています。美術館のビデオの中で星野さんは、こう言っていました。「私は、このようになって、幸せです。みんなの愛の中で生活できる喜びを感じることが出来るようになれたのだから」と。そのことばを聴いたとき、わたくしは感激し涙していました。
星野さんの詩画集「四季抄 風の旅」(立風書房)に「たんぽぽ」というのがあります。
いつだったか きみたちが 空をとんで行くのを見たよ
風に吹かれて ただ一つのものを持って
旅する姿が うれしくてならなかったよ
人間だってどうしても必要なものは ただ一つ
私も 余分なものを捨てれば 空がとべるような気がしたよ
執着して握りしめているものを手放してみたら、たんぽぽの綿のように空を飛べるかもしれません。「私は何に執着しているのだろう?」そんなこと、今まで考えたこともありませんでした。素晴らしい人との出逢いと気づきを得た昨春の一日でした。
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